浮気調査コラム

シャワーへ直行する夫の浮気調査⑥(全7回)

ドアスコープ越しの撮影については、カメラにもよるが、そのままでは撮影しずらい。
まず、ドアスコープ自体を入れ替える専門の器材もあるのだが、これは、ご近所トラブル等の際に依頼者自身の自宅ドアのドアスコープ自体を入れ替えるものである。

前回のコラムシャワーへ直行する夫の浮気調査⑤の続き
その他の回はこちら

ドアスコープ越しの張込み

今回のようにホテルのドアスコープ越しに撮影する場合、普通のカメラをそのままドアスコープに近づけると恐らく暗くなるだけで撮影できないであろう。スマホのカメラならある程度撮れるかもしれないが、かなり不鮮明になる。
完璧ではないものの、私もそれなりの器材は持ち歩いている。今回もその器材を使用して、ドアスコープ越しの撮影を継続する。

なお、ここで話しているドアスコープ越しとは、あくまで室内(部屋の中)から室外(廊下)を撮影する際のことである。室外(廊下)から室内(部屋の中)をドアスコープ越しに覗いたり撮影したりするのは、物理的には可能であるが、それをしたら犯罪である。探偵であろうが一般の方であろうが、絶対にしてはならない。

ラブホテル内での張込みの場合、カメラ越しになるということもあり、例えば30分ずつ交代でベッドで横になりながら少し休憩することもある。
私と今回の女性調査員はお互い長い付き合いだし、異性にしては珍しく話やテンポも合うので、ラブホ室内の玄関付近でカメラの映像を見ながら世間話をしていることが多い。

対象者らがラブホから出る

対象者である夫と不審女が303号室に入ってから2時間弱が経過した午後4時08分、相変わらず素っ気ない態度の夫が先に出てきた。ドアが閉まり切る前に不審女も出てきて夫の後を追っている。その様子はバッチリ動画で撮影できた。さすがに帰りも同じエレベーターに乗るのはおかしいので、私は直ぐにこの状況をA調査員に報告し、ワンテンポ遅らせてから外へ出た。

次のエレベーターが来るまで少し時間がかかってしまい、私と女性調査員がホテルを出た時には既に夫は車を走らせており、それを追ってA調査員が運転する調査用車両が30~40メートル先に見えた。不審女は西武新宿駅方向へ歩いているのが見えたので、その尾行は女性調査員に任せ、私は対象車両とA調査員が運転する調査用車両の2台を追う形でタクシーに乗った。

タクシーを利用した尾行

状況にもよるが、今回の状況ならば問題ないので、私はタクシーの運転手さんに対し正直に尾行中であることを告げた。運転手さんも直ぐに状況を把握してくれて
「間隔とか距離とか言ってくださいね。」
と返答してくれる。そこそこベテランのタクシー運転手さんであれば、探偵や警察官(いわゆる刑事さん)等の尾行に利用されたことがある人も珍しくはない。今回の運転手さんは、
「前に警察手帳見せられて尾行を手伝ったことが2回あるんです。探偵さんは初めてですねぇ。」
と言いながら、ハリきって追ってくれている。

目的や対象者によって変わってくるので一概には言えないのだが、警察の尾行は対象者(被疑者、犯人)に気付かれるくらいならば失尾(見失うこと)した方がマシというケースが多い為、それなりに距離をとった尾行をすることが多い。それに、警察に追われているような者(≒犯罪者)もまた百戦錬磨なので、「点検癖」といってしょっちゅう周囲や後ろを振り向いたりして警戒することが多いのである。
一方こちらは、“所詮は”とまでは言わないが浮気調査である。浮気をしている者の中には、ある種浮気調査をされる側のベテランといった部類の者がおり、犯罪者かと疑いたくなる位に点検癖のある者が稀にいるが、それはあくまで少数派、普通はそこまで警戒していない。ただし、尾行に対する警戒とは無関係なのだが、運転の上手な人だと、運転センスのない馬鹿に突っ込まれるような事故を防止する為に、常にバックミラーを見ている。
そこいら辺のバランスを考えながら、我々探偵は車両尾行の際の距離(間隔)を調整している。この辺のセンスは経験がものをいうので、素人には真似出来ないであろう。

私は、タクシー内からA調査員に対し連絡し、
「今、こっちもタクシーで後ろ付いてるから」
と伝えたところ、
「□□交通の車ですよね、了解でーす」
とこちらのタクシーの行灯(「あんどん」と読み、タクシーの屋根に付いている会社名等の表示)も把握していたようである。さすが、広い視野をもって業務に従事できる信頼のおける調査員である。

友人と合流

対象車両は往路とは違い、職安通りをそのまま抜弁天通りへ直進し、曙橋駅や防衛省前を通過し、市ヶ谷駅近辺から細い道へ入って行く。
そして午後4時41分、とあるマンションの前で停車した。2分後、対象者である夫と同年代の男がゴルフバッグを持って出て来て、対象車両の助手席に乗車した。直ぐに車は走り出す。
この間に、私はタクシーを降りてA調査員が運転する調査用車両に乗り換えることも出来たのだが、車両尾行は複数台で入替えながらの方が気付かれにくい。しかも、今乗っているタクシーの運転手さんは尾行のセンスも良いので、このままお願いすることにした。依頼者に請求する経費(実費)はその分高くなるが、数千円のタクシー代で尾行を失敗する確率を大幅に下げられるならばご理解頂けるであろう。(契約時に説明もしている。)

ゴルフ練習場へ

車は、皇居と北の丸公園を貫く代官町通りに入り、大手町から永代通りを経由し、江東区の東陽町駅近くに在るゴルフ練習場へ到着した。
私は乗っていたタクシーの運賃を支払い、運転手さんに心ばかりのチップを渡し、A調査員に合流した。チップは自腹である。
休日の夕方なので、ゴルフ練習場は混雑している。ここの練習場は、出入口から離れた側の駐車場から打席を全部見渡せるので、調査用車両をそちらへ移動させた。スマホを確認すると、女性調査員のLINEで女が既に帰宅した旨の報告が入っていた。
私は、これらの状況について一旦依頼者である奥様へ報告した。この後浮気をする可能性はほぼないが、友人と食事に行くだろうし、会話を聴けないかと要望されている。対象者らの入る店の混雑状況によっては、まるで会話を聴けない可能性も充分にあり得ることを念押ししたうえで承諾頂けたので、引続き調査を継続することとした。

※本コラムにおいて当事務所の取扱い事例を紹介している場合は、事実を脚色することなく記載していますが、当事者の特定等を避ける為、調査事実を歪曲しない範囲で設定(関係者の職業や道路、建物の位置関係等)を変更しています。また、掲載にあたり、必要に応じて依頼者の承諾を得ています。