今回の浮気調査は40歳代妻からの依頼であり、夫は自動車関連会社を経営している50歳代である。
依頼者によれば、半年程前から夫がお洒落に気を遣うようになり始め、休日前後は外泊することも多くなっていたので、依頼者である妻としては漠然と浮気を疑っていたところ、夫が突然「子供も20歳を超えて独立したし、しばらく一人になりたい。」と身勝手な理由で先月から家を出て行き別居し始めた。しかも、その別居先がどこなのか、妻には隠したままであり、週に1回位自宅へ郵便物を取りに戻ってくるだけとのこと。
このまま離婚になっても構わないが、浮気しているなら相手の女にも慰謝料請求したいしとのことで、調査依頼に至った。
夫の住居が不詳(不明)であるため、都内に在る会社を張込み、まずは別居先がどこなのかを調査することとした。
現場の下見
調査実施の2日前、夫の会社付近の下見を実施した。航空写真やGoogle Mapのストリートビューで把握していたが、夫の会社の前面道路は車一台が通れる程度の幅しかなく、人通りもまばらである。その他諸条件を考慮しても、会社の出入口を直接監視するのは無理なので、この細い道路を少し進んだ所で交差する片側2車線の都道沿いで張り込むことにした。
経営する会社を張込み
今回は予算の都合上、調査初日は私一人で実施することとなった。当事務所の場合、依頼者が希望するなら、このように調査初日等は様子見程度という前提で、予算を抑える為に1名で実施することもある。
複数の調査員でやるより調査に失敗する可能性が高くなることは、依頼者も重々承知のうえである。
夫は経営者であり、妻と同居中にも夕方5時頃に帰宅することもあったということなので、私は午後3時から会社付近を張込むこととした。
下見の際に決めていた張込み位置で監視していると、午後4時50分過ぎに、夫に類似する軽トラックが会社方向へ入って行った。私も会社前を徒歩で通り過ぎると、その軽トラックが敷地内に停まっている。
再び都道へ出てきて張り込んでいると、午後5時半前、夫が自転車に乗ってこちらへ向かってきた。肩から鞄をかけており、このまま帰る様子である。
探偵は一般的に、このような場合に備えて予め自転車も用意している。私も自転車に乗って夫の尾行を開始すると、ものの5分も走らず3階建てのマンションへ入って行った。このマンション、間口は大して広くないが、1階に寿司屋があり、その脇にマンション居住者用の出入口がある。夫は乗っていた折り畳み式自転車を持ち上げ、階段を上がって行った。私もマンション前の道路からその様子を見ると、夫が階段を上がって直ぐの所に自転車を置くのは見えたが、部屋へ入るところまでは見えなかった。まあ、調査初日であるし、この状況で無理に部屋を特定しようとすれば、気付かれる可能性が高い。別居宅と思われる場所が分かったので、後日改めて部屋の特定をすればよいだろう。
マンションでの調査
このマンションの裏側には電車が走っており、反対側は線路と並行して道路がある。つまり、マンションのベランダ側を全部見ることが出来るのである。私一人しかいないのでどうしようか迷ったが、一旦、正面の入口の張込みをやめて裏手に回ってみると、2階3階にそれぞれ4部屋分のベランダがあった。2階のベランダは全部灯りが点いていた。
しかし、どの部屋も室内の様子は見えないし特に参考になることもなかったので、再びマンション正面入口に戻り、依頼者である妻にこれまでの状況を電話で報告したところ、この後夫が食事に出たりする可能性もあるから引続き調査を続けて欲しいとのこと。
会社経営者でそれなりに金も持っているようだし、この1階の寿司屋にでも降りてきてくれないかなと期待して張込んだものの、夫がマンションから出てくることはなく、不審な女が出入りすることもないまま午後9時になった。
恐らく今夜は外出しないであろう。予算のこともあるし、無駄な調査はしたくない。
依頼者に状況を伝え、この日の調査を打切った。
※本コラムにおいて当事務所の取扱い事例を紹介している場合は、事実を脚色することなく記載していますが、当事者の特定等を避ける為、調査事実を歪曲しない範囲で設定(関係者の職業や道路、建物の位置関係等)を変更しています。また、掲載にあたり、必要に応じて依頼者の承諾を得ています。