依頼者によれば、夫はこの日、仕事が終わり次第、学生時代の友人と2泊3日の旅行に行くとのこと。この友人とは依頼者である妻も会ったことがあるが、男友達同士、浮気のアリバイとしてお互い利用し合う等、当たり前のことである。
本件3回目の調査
いつもどおり相勤のA調査員とともに、調査用車両で夫が店長を務める喫茶店に到着した。現在時刻は午後8時20分。現着直前、これまでの調査で判明している喫茶店近くの月極駐車場に夫のSUVが停まっていることも確認済みである。
店内には、初めて見る可愛らしい女性店員がいる。チラチラと店長であり対象者である依頼者の夫も確認できる。
午後8時40分過ぎ、店の看板が消えた。客が居らず、少し早めの閉店のようだ。
午後9時00分を過ぎても、店内には男性従業員1名を含めた3名の姿が時折みえる。
これは浮気相手の女か
そして午後9時43分、店内の電気が全て消え、夫、可愛らしい女、男性従業員の3名が出てきた。店頭で男性従業員だけは駅方向へ向かったが、夫と可愛らしい女は一緒に月極駐車場方向へ歩き始めた。喫茶店を3人が出てきた時、動画に加えて各人の写真も撮れている(カメラの性能や特性の関係上、動画から作成した画像より、写真用カメラで撮影した画像の方が画質は明らかに良く、調査報告書に添付した時の鮮明さもまるで違うので、当事務所では動画に頼らず極力写真撮影も実施している。)。この女が、依頼者が言っていたメンヘラ女なのか。月極駐車場に到着すると、左側運転席には夫が、そして右側助手席にその女が乗車して発進した。私たちも車両尾行を開始する。
単に従業員をどこかまで送っていくだけなのか。しかし、浮気調査をやっている我々探偵からすれば、既に写真も撮れている以上、この女が浮気相手のメンヘラ女であって欲しいというのが正直な本音である。依頼者にとっても調査費用の観点で、早く証拠がとれるに越したことはない。
走り始めて7分程で、道沿いのセブンイレブンに入った。二人は楽しそうに、まずはさらっと雑誌コーナーで何やら談笑している。これは、浮気相手の女であろう。夜間のコンビニエンスストアの雑誌コーナーで談笑してくれるカップルは、我々浮気調査探偵にとっては極めてありがたい。コンビニエンスストアの雑誌コーナーは、全国どこの店舗でもほぼ道路側に向いており、店内の灯りで顔がはっきり写る程に明るく、しかも当人達カップルが立ち止まってくれることがほとんどなので、動画や写真が撮り放題なのである。
我々はその状況をしっかと撮影した。そして夫とその女は雑誌コーナーを離れたので、A調査員を店内へ行かせたところ、ビール4本とつまみ類、更には弁当1個とおにぎり、サンドイッチ各1個を購入したことが判明した。それを会計する様子も、私が外の駐車場からしっかりと撮影できた。
いつものマンションへ
店内に入ってから10分で出てきた二人は、再びSUVに乗って走り出し、当然のようにこれまで夫が出入りしていた5階建てのマンションへ到着した。そこで右側の助手席から女だけが降りた。SUVの尾行はA調査員に任せ、私は女の動向を監視した。女は、所持していた鍵でオートロックを解除し、入って直ぐ右側郵便受けを開けて広告を捨てたりしている。私は周囲に通行人がいないことを確認し、既に動画撮影モードにしているカメラを道路からその方向へ向け、女が触っている郵便受けの位置を特定した。よし、これで後から確認すれば、部屋番号も特定できる。ほどなくして、女はエレベーターに乗った。そのエレベーターは、当然3階で停止した。同時に、A調査員から電話が入り、夫が車を降りてマンションへ向かっていると連絡があったので、私は「野郎がマンションへ入るところはこちらで撮れそうだから大丈夫。それより丁度今、女がエレベーター上がったところだから、ベランダ側見てくれないか。」と指示をした。このタイミングで部屋の灯りが点いた位置は、女の部屋であると強く推測できる。
ちなみに、私の発言にある「野郎(ヤロウ)」とうい言葉、このブログをご覧になるような皆さんにおいては、調査対象者のことを「マル対」ということは既にご存じかと思うが、これはどちらかというと無線用語であり、探偵や特に警察官等の仲間内の日常的なやり取りでは、単に野郎(ヤロウ)ということも多い(私はよく知らないが、都道府県や地域によっても結構違うらしい。)。
話を元に戻そう。
直ぐに夫がマンションの正面玄関を入った。よし、しっかり撮影できた。夫は、前回同様オートロックを操作し、直ぐに中へ入っていった。合鍵は持っていないようである。夫が乗ったエレベーターも当然3階で停止したままである。
浮気相手の部屋番号を特定
A調査員から連絡はないが、それは私が夫の様子を撮影していることを知っているから、このタイミングでの連絡を控えるべきと判断しているのである。私がテクテクと歩いてマンションの裏に回るとA調査員はまだベランダに向いて動画を撮影しているようである。
私が近づくと、A調査員が「一番左ですね。」と小声で言う。3階の向かって一番左側のベランダ越しの電気が点いたという意味である。
私たちは、一旦調査用車両に乗り込み、それぞれが撮影した動画を確認し直した。
私が女を撮影した動画には、郵便受け全体が写っており、部屋番号の記載までは確認できないがその中で女が開けていた郵便受けの位置ははっきりしている。一方、A調査員が撮影した動画には、マンション全体が写っている動画で、途中、3階の向かって一番左のベランダ越しの部屋に電気が点く瞬間が収められていた。状況的には、この部屋が女の部屋なのであろう。
私は再び正面玄関側に回り込み、住居侵入罪に抵触することなきよう、あくまで道路上からオートロック内の郵便受けを望遠撮影した。角度的にギリギリであるが、女が触っていた郵便受けが301号室であることが分かる写真も撮れた。残念ながら、表札は無さそうである。
昼間であれば、不動産登記簿の情報を取得してA調査員が電気の点灯を確認した部屋が301号室であるかを確認する方法もある(分譲か否か等により確認出来ない場合もある。)が、この時間では無理である。取敢えず、依頼者である妻に連絡し、既に撮影済みの女の画像も送ったところ、疑っていた元同僚のメンヘラ女に間違いないとのこと。依頼者の予想どおり、夫の浮気相手は、妻との結婚前から夫に言い寄っていた例のメンヘラ女だったのである。
徹夜の張込みへ
あとは裁判でも証拠になる資料の収集である。浮気調査で最も欲しい画像や動画は、男女が一緒にホテルなり住宅なりに入って、数時間以上経ってからそこから一緒に出てくるところである。しかし今回は、喫茶店を出てからセブンイレブンを経由するまでは二人が一緒にいるところまでを撮れており、前後の状況からすれば明らかであるとはいえ、二人が一緒にマンションへ入ったわけではない。
依頼者である妻は、2泊3日の旅行と聞いている以上、明日も二人でどこかへ行くことは間違いないのであろうから、このまま朝まで調査を続けて欲しいとのこと。
朝まで継続して張込み。本音をいえばどうせ朝まで出てこないのだから休みたいが、その欲望にまけるのが素人である。この状況では絶対に証拠を掴みたいので頑張る、それが仕事としてやっている探偵の使命であり、ここで頑張れるからこそ依頼を頂けているのである。
よし、徹夜の張込み、頑張るぞ。
※本コラムにおいて当事務所の取扱い事例を紹介している場合は、事実を脚色することなく記載していますが、当事者の特定等を避ける為、調査事実を歪曲しない範囲で設定(関係者の職業や道路、建物の位置関係等)を変更しています。また、掲載にあたり、必要に応じて依頼者の承諾を得ています。