先週土曜日の調査は、残念ながら対象者である夫が外出すらせず、完全な空振りになってしまった。しかし、これは想定の範囲内である。依頼者である奥様によれば、帰宅後にシャワーへ直行するのは、結婚前の同棲を始めた頃から現在まで月に2回位の割合でずっと続いているわけだから、3週間連続で調査すればどこかで動くのであろう。
2回目の調査
今週は、土曜日に奥様と外出することが決まっていたので、日曜日の正午から張り込むことに決まった。
私達は、午前11時40分に到着し、前回同様に対象者らのマンションの駐車場出入口に対する視察張込みを開始した。今回も、夫が外出した場合には奥様から連絡があるはずであるが、連絡事故に備え気は抜けない。
夫が一人で外出
午後1時12分、奥様から「これから出そうです」と短いLINEが来たので、私も「了解です。」とだけ直ぐに返信し、相勤者のA調査員と共に集中する。
午後1時14分、今度は奥様から電話があり「今、出ました。車の鍵も持って行ったので、多分車で出ます。宜しくお願いします。」とのことだった。私は、今日の夫の服装を素早く聴き取り電話を切った。この後、エレベーターを降りて、乗車して、エンジンを暖めて、地下の駐車場をグルっと回ると、車が道路に出てくるまでに恐らく5分位はかかるであろう。
午後1時20分を過ぎても出てこない。この位はよくあることなのだが、どうしても「見落としてないよなぁ」と不安になってしまう。
午後1時23分、依頼者から聴いていた夫の高級車が出てきた。運転席の男も対象者である夫に間違いない。
尾行開始
我々は、A調査員の運転で夫の車両尾行を開始した。私は、左後部座席で撮影担当である。
夫は、昭和通りのアンダーパスを新橋方面へ走行していたが、途中で側道に出て、歌舞伎座前の交差点を右折しようとしている。銀座辺りで誰か拾うのか。
私は、要所要所で地名の入った道路標識と対象車両が1枚に写るように写真も撮影する。これは、対象者がどこに居たのかを証明する為である。後々裁判になったりして、夫が浮気を否認した場合には、その前後の状況に関する証拠を保全しておくことも重要なのである。
夫の車は引続き走行し、銀座四丁目交差点を通過し、日比谷公園、警視庁前、三宅坂と皇居に沿って走り、半蔵門から国道20号線へ左折した。これだと、新宿の可能性が出てくる。車は更に進むが、いかにも走り慣れた様子で途中右左折を繰返し、最短距離で新宿区の職安通りに入り、途中で路上に停車した。コンビニエンスストアの前であるし、買い物の可能性もあるが、夫は出てこない。道を左に入れば、歌舞伎町のラブホテル街である。誰かが合流する可能性もあるので、動画を撮影しながら画質の良い静止画を撮る準備もする。
浮気相手の女が合流か!?
停車して1分も経たない内に、夫の乗る対象車両の助手席側の歩道上に、30歳位の女が現れ、車に乗るわけでないが、車の中を見つめてジッと立っている。しかし夫は降りてこない。私達調査員は真後ろに停めた調査用車両の中で、
「何だ、この女?」
「接触者か?野郎(夫のこと)が降りて来るの待ってるのか?」
「もう2分は経ってるよな?野郎、まだ乗ってるよな」
「じゃあ、関係ないのか、この女」
「えっ、いや、それじゃおかしいだろう。だって、この女ずっと車見てるだろう。
「キ〇ガイじゃないの?歌舞伎だし(⇐新宿区の歌舞伎町のこと)」
と、この状況を把握できないまま調査を継続する。
対象車両が停止し、不審な女が路上に突っ立ってから4分、夫が車を降りて来た。やはりコンビニで買い物か。すると、この不審女が何やら夫に話しかけているが、夫の方は完全に無視している。夫がコンビニに入ると、後ろから不審女も入って行く。
この不審な女、見た感じは特におかしな人ではないし、どちらかと言えばモテそうな部類に入る方である。しかし歌舞伎町という街には、本当に想像できないレベルの異常者がワンサカ歩いている。きっとこの女も見た目が普通なだけで、我々の調査対象者に一目惚れでもして即時ストーカーにでもなったのだろう。これには私達調査員も、対象者である夫に少し同情してしまう。
見間違い? いや、やっぱり知り合い!?
私は取敢えず、夫が何を買うかを確認する為にコンビニに入った。すると、相変わらず不審女が夫の後ろを付いている。「怖えなぁ、こういう女」と思ったその瞬間、対象者である夫が手に取った菓子を、その不審女が持っている買物カゴに入れているではないか!!いや、見間違いか?
その後も、夫が陳列棚から手に取った商品を、不審女が持っているカゴに入れている。すると不審女が夫に「これ、要らないの?」と優しく声をかけた。しかし夫は「あん?ああ。」と何故そんなにという位に不機嫌な態度で返答する。
うわー・・・、この女、キ〇ガイじゃなかった。しかし、この二人の関係、一体何なのだろう。
※本コラムにおいて当事務所の取扱い事例を紹介している場合は、事実を脚色することなく記載していますが、当事者の特定等を避ける為、調査事実を歪曲しない範囲で設定(関係者の職業や道路、建物の位置関係等)を変更しています。また、掲載にあたり、必要に応じて依頼者の承諾を得ています。