今回の浮気調査は、30歳代の妻が依頼者、40歳代の夫が対象者である。
結婚3年目で、奥様のお腹には初めての赤ちゃんがいる。夫はなかなかのさわやかイケ面といった雰囲気であるが、40歳を超えて少し老け込み始めの気がある。奥様いわく、夫は人当たりが良く、誰にでも優しいタイプだから、女が言い寄ってくることはこれまでにもあったようだし、夫も結婚前にそれなりに遊んでいたことは認めているとのこと。
帰宅するとシャワーへ直行
奥様が当事務所へ相談に来所したのは、夫が週末出かけて帰ってくると、普段はそんなことないのに、月に2回位の割合でシャワーへ直行することが続いており、何か嫌な予感がするし、子供も産まれるので、もし浮気ならば別れさせたいということであった。
夫婦共働きであるが、休日は二人ともカレンダーどおりであり、土日のどちらかは一緒に過ごし、もう一日はそれぞれ友達と会ったりと自由に行動することが暗黙のルールになっているとのこと。これならば、調査を実施すべき日も絞りやすく、調査費用を抑えやすい。
調査方針
そこで、取敢えず3週間連続で各週1日ずつ調査を実施することに決まった。
夫婦の自宅は、東京中央区に在るセキュリティー万全の高級マンションであるが、夫はほぼ100%自分の車で外出するし、車はマンションの地下駐車場に停めているとのこと。
週末は、昼近くまで寝ていることが殆どとのことで、調査開始は正午からに決定した。しかも依頼者である奥様も自宅に居るので、夫が外出するタイミングで私に連絡を頂けることになり、正直、我々にとっては相当ラクな張込みである。
張込み開始
第1回目の調査は、日曜日に奥様と夫で外出する予定があるとのことで、土曜日に張込むことになった。
土曜日当日、私と相勤者のA調査員は、午前11時30分頃に対象者らの居住する高級マンション付近に到着した。予め依頼者から得ている情報により、駐車場の出入口は1ヵ所である。目の前には我々の調査用車両を停めていても全く不自然でなく、張り込み環境としては大変快適である。テレビや映画と違って、こんなに張込みやすい現場はそうそう無い。
奥様には、夫が外出しそうになった場合、夫に気付かれない範囲で可能であれば予めLINEで知らせて欲しいということを伝えてある。そして、そのLINEに対して私から返信がなければ、夫が外出して部屋から居なくなった後に必ず私に電話をするようお願いしている。勿論、私達も駐車場の出入口を張っているのだが、万一、徒歩で外出したり、又は他の車が迎えに来ることも考えられるからである。また、私からのLINEの返信が無い場合というのは、LINEアプリの不具合で奥様が連絡をくれていても私に着信が無い場合に備えた一種の危機管理である。
空振り
張込み開始から既に4時間近くを経過して、間もなく夕方4時である。ゴミ置き場からこっそり出て行かれた等がない限り、まず間違いなく見落としたとうことはない。それに、奥様からのLINEも来ていない。懸念しているLINEの不具合があったとしても、電話の着信はないし、まだ夫が自宅にいることは間違いないのであろうが、「もしかしたら、見落としたか。」とどうしても疑心暗鬼になってしまう。しかし、ここで私から奥様へ連絡をすることは出来ない。万一、それを夫に気付かれたら元も子もないからである。
4時半前、奥様からLINE連絡がきた。
「お世話になります。今日は、どこにも行かないようです。せっかく調査して頂いたのに申し訳ありません。明日、改めて連絡しますので、今日は終わりにしてください。」
とのこと。
契約上は当然であるし、事実、我々も張込みによって時間を売っているわけだから、料金が発生するのは仕方ないのであるが、依頼者にとっては何らの成果も無いのに調査費用を頂戴するのは、こちらの方こそ何だか申し訳ない。
しかし、これから探偵に依頼をしようとしている読者の皆さんに知っておいて頂きたいのは、状況によってはこのように調査自体が無駄になることがそれなりにあるということである。いや、そもそも調査とは、相手に知られないようにその行動を確認するのだから、無駄になる時間が圧倒的に多い。その無駄をいかに減らせるかは、依頼者と私達探偵業者が緻密な打合せをし、そして多くの経験から予測をする能力にかかっている。
残念であるが、来週末もう一度調査を実施することになりそうだ。
※本コラムにおいて当事務所の取扱い事例を紹介している場合は、事実を脚色することなく記載していますが、当事者の特定等を避ける為、調査事実を歪曲しない範囲で設定(関係者の職業や道路、建物の位置関係等)を変更しています。また、掲載にあたり、必要に応じて依頼者の承諾を得ています。