いよいよ週末の調査となった。これまでの調査で、対象者である夫と不倫女が同棲していることはほぼ明らかになったが、週末の様子も見て欲しいとの依頼者の要望に基づき、土曜日も引続き浮気調査を実施することになった。
依頼者は、これまでの調査結果で夫に怒り心頭ということもあるが、言い逃れが出来ない証拠を取りたいことや、徹底的に調べ上げたということを夫や不倫女に分からせることで少しでも仕返ししたいという気持ちも強いようで、調査員を3名で実施しても構わないとおっしゃっていた。確かに、調査の成功率を上げる(失尾等の失敗を減らす)うえで、調査人員や車両の台数が多いに越したことはない。しかし、浮気調査の本来の目的である慰謝料請求等に必要な証拠は既に取れているので、3名もの人員を投入するのは費用対効果の面からしてお勧め出来ないことを伝え、確かに多少失敗のリスクは上がるが調査員は2名で実施することになった。
調査員2名で表と裏の張込み開始
昨夜、夫は5時間半も酒を飲んでいたので、休日に早くから外出することはなさそうであるが、動きがよめない以上、私は相勤者のA調査員と共に朝の6時から張込むことにした。
現場に到着後、調査用車両をマンションの正面玄関が見えるいつもの場所に配置し、A調査員には付近でカーシェアリングの車両を借りさせ、ベランダ側を張り込んでもらう。
土曜日で会社は休みであろうから問題ないが、8時を過ぎても対象者らは出てこない。張込みだから同じ場所にずっと居るのは当たり前なのだが、出来ることなら動きがあった方が時間が経つのが早いし、費用を負担している依頼者にとっても、その方が良い。
不倫女がベランダに顔を出す
10時10分ころ、A調査員から「今、女が布団干してますよ。ツラも撮れてます。」と連絡が入った。「ツラ」とは「面」と書くのだが、顔のことである。布団を干すということは、二人とも起きた可能性が高い。
ここで、A調査員には、ベランダ側の張込みをやめて、カーシェアリングを返却して、こちらの車両へ戻ってくるよう指示をした。
このまま裏を張り込んでいれば、不倫女と二人一緒でなくとも、夫もベランダに出てくるかもしれない。そうすれば、先程の不倫女が出てきたのと同じベランダから出てきたということで、同一の部屋に居たことの重要な証拠になるのは確かだが、そもそもこの状況で夫が出てくる可能性は特に高いわけではない。むしろ、この後に夫と不倫女が一緒に外出する可能性が高いので、調査員2名体制である以上は、その尾行に備えた体制を組むべきである。このように、慰謝料請求をはじめとした依頼者の調査目的や理由を念頭に、より費用対効果のある調査方法を判断するのも、プロとしてお金を頂いて業務にあたる探偵の仕事である。
夫が単独で外出・・・しかし予想どおり
お昼の12時少し前、対象者である夫が一人で自転車に乗って外出した。「一人かよ。。。」と思ったが、いつもの作業着ではなく、明らかにおしゃれ着である。私も自転車で尾行をしたところ、会社に来てしまった。しかし駐車場で自転車を降りると、会社の建物には入らず、敷地内に停まっていた普通乗用車で走り出した。なるほど、不倫女と出かける為に、車を取りに来たようだ。
私は自転車で急いでマンション方向へ戻りながら、A調査員に連絡をし、恐らく夫が車で戻るだろうから、直ぐに車両尾行となるであろうことを伝えた。
会社とマンションが近いことと、一方通行の関係で、車で移動している対象者より、自転車移動の私の方が先にマンションへ到着した。
二人で外出
その1分後、対象者が運転する普通乗用車がマンション前に到着すると、程なくして不倫女も出てきて助手席に乗車し、車が発進した。
車は30分ちょっと一般道を走り、到着したのは大型ショッピングセンターである。まずは、家具店に入り、何かを目当てという雰囲気でなく、店内全体をゆっくりと回っている。歳が離れているものの、付き合い始めの楽しそうなカップルという雰囲気がまた、腹立たしい。
その後も二人はショッピングモールで食事をして、ペットショップで犬猫を見て回り、最後にスーパーマーケットで2ℓのペットボトルや調味料、肉や野菜を買った。
そして、夕方には仲良くマンションへと帰宅した。
マンションへ到着すると、購入した食料の袋が多かった為、夫も一旦マンションへ入った。そして案の定、夫だけが下に降りてきて、車に乗って走り出した。私はA調査員に、裏に回ってベランダの様子を見るよう指示をした。朝干した洗濯物を女が取り込むであろうから、その状況を一応撮影させる為である。夫の方は、車を会社に戻して自転車で帰宅するであろうから、その程度であれば、私が自転車に乗りながら撮影できる。
夫は予想どおりの行動をし、マンションへ帰宅した。丁度、同じタイミングで、不倫女が洗濯物を取り込んだとA調査員から連絡があった。
調査完了
こうして、連続6日間にわたる浮気調査が終了した。
依頼者である妻は、夫と不倫女に対する怒りが頂点に達したとうい様子であったが、当事務所の調査には充分ご満足頂けた。
この後、依頼者は弁護士に依頼をしたのだが、これまでの調査報告書によって夫や不倫女もこれら事実を否認することができず、裁判にもならずに、すんなりと慰謝料請求に応じたことを、後日報告された。
※本コラムにおいて当事務所の取扱い事例を紹介している場合は、事実を脚色することなく記載していますが、当事者の特定等を避ける為、調査事実を歪曲しない範囲で設定(関係者の職業や道路、建物の位置関係等)を変更しています。また、掲載にあたり、必要に応じて依頼者の承諾を得ています。