今回4日目の調査である。そして今朝も対象者である夫は、昨日、一昨日とほぼ同じ時刻に同じように自転車で会社へ出勤した。
これまでと違うのは、調査方針であり私の動きである。
夫が出てきたこのマンションに女が居るであろうことは分かっている。ならば今日は、夫の尾行なんてする必要ない。むしろこのマンションを張込んで、女の動きを監視しよう。
一般的な浮気調査といえば、対象者と不倫相手が一緒にラブホテルへ入るところを証拠撮影するイメージがあると思うが、実際のところ今回のようなケースも多い。このような場合、浮気調査の視点で面倒なのは、対象者と不倫相手が一緒に出入するとは限らないことである。そうすると、それぞれの者が同一の場所に反復継続して出入していることを証明する他なく、時間も費用もかかってしまうのである。
夫が帰宅、そして女が同乗
今日もランチの時間にでも、対象者である夫とこの不倫女が接触してくれれば良いのだが、どうなることやらと思いながら一人でマンションを張り込んでいたところ、まだ午前9時05分だというのに、夫が中型の積載車(自動車を運ぶトラック)に乗ってマンション前に到着した。積荷は空である。夫は積載車の運転席に乗ったままであり、この時間だからランチの時間でもない。
するとなんと、例の若い女が夫と同じデザインの作業着を着てマンションから出てきた。そのまま積載車の助手席に乗ると、運転席の夫は車を走らせた。この女、今までその様子を見せなかったが、夫の会社の従業員なのか。
車両尾行
私は積載車の車両尾行を始めた。車両尾行は、交通状況により失敗するリスクが高く、それなりに高度なテクニックが必要となるのだが、対象車両が今回のようにトラックや大型車となると、無理な運転をされることもなく、比較的ラクである。とはいえ、間に1台でも割り込まれ、信号の変わり目だったりすると失尾することもあるので油断は出来ない。
積載車は、東名高速に入り、川崎市、横浜市、相模原市、大和市、海老名市を通り過ぎ、厚木インターを降りた。一般道での車両尾行こそ、気を抜かないように注意する。
20分程走った所に在る板金工場に入った。この工場の目の前には広大な畑があり、その反対側に道路があったので、私はそこで張り込むことにした。距離は150メートル程あったが、遮る物もなく、車や人の通行もまばらなので全然余裕の張込みである。
暫らくすると、対象者達が乗ってきた積載車に乗用車1台を載せている。そして、積載車の運転席には夫だけが乗っており出発の準備をしている様である。女はどうしたのかと思っていると、積載車の横に別の乗用車乗りつけた。その運転席には、女が乗っている。なるほど、乗用車2台を取りに来るにあたって、夫がこの女を連れてきたようだ。
乗用車を積んだ積載車を夫が運転し、その後ろには女が運転する乗用車が付く形で、板金工場を出発した。再び車両尾行である。
ランチタイムも二人仲良く
往路を戻る形で、厚木インターチェンジから東名高速にのると、2台は海老名サービスエリアに入った。丁度昼時である。
対象者である夫と不倫女は、同じ作業着を着て楽しそうにフードコートへ入り、カツカレーと味噌ラーメンを食べている。私もついでに食べたかったが、二人の様子を撮影するので手一杯であり、とてもそんな暇はなかった。
部屋番号の特定
その後、2台は夫の会社に到着し、午後3時前には夫が軽トラで女だけをマンションに送り届け、夫は再び走り去った。恐らく会社へ戻ったのであろうが、尾行はせず、再びマンションを張り込むことにした。
すると、マンションへ入った女が1階の集合郵便受けを開けている。やった、これで号室が分かる。
202号室だった。
ベランダに女の姿あり
ここで私は一旦、マンション裏手へ回ることにした。ワンオペなのでマンションの正面出入口を監視出来なくなるが、この状況であれば、女が外出したとしても夫と接触する可能性はさほど高くないし、浮気調査として、依頼者の目的を考えれば、女の居住実態を明らかにすることも重要である。
試しに午後4時までの1時間だけ、ベランダの監視をしてみよう。すると案の定、張り込み始めて10分程でベランダに女が出てきて洗濯物を取り込んでいる。
昨日今日しか女の姿を見ていないので、これだけで断定するのも良くないのだが、状況や雰囲気からして、この女はこのマンションに住んでいるのであろう。だとすると、夫が借りた部屋に転がり込んできたのか、それとも女が元々住んでいたこの部屋に夫が転がり込んだのか、現時点では知る由もない。
その後は、いつもと変わらず夫が帰宅し、午後6時、その日の調査を終えた。
※本コラムにおいて当事務所の取扱い事例を紹介している場合は、事実を脚色することなく記載していますが、当事者の特定等を避ける為、調査事実を歪曲しない範囲で設定(関係者の職業や道路、建物の位置関係等)を変更しています。また、掲載にあたり、必要に応じて依頼者の承諾を得ています。