喫茶店店長浮気調査②（全４回）

対象者の夫が店長を務める喫茶店の閉店は２１時である。
私は依頼者である妻との打合せの際、夫が閉店時刻より前に出た場合には調査が無駄になる可能性もあることを伝え、例えば少し早めの１９時頃からの張込みを提案していたのだが、妻によれば曜日ごとのパターンからしてその必要はないし、調査費用を抑えたいからと２１時からの調査を要望された。

前回の駐車場に車が無い

前回の調査では、妻の言うとおり２１時過ぎに夫が店から出てきたのでよかったが、本日もそううまくいくものか。。。
調査契約上は２１時に張込みを開始すれば良いのであるが、実際には２０時半前には現場付近に到着した。喫茶店の張込み前に、前回夫が自身のＳＵＶを停めていた月極駐車場に向かったところ、そこに車は無い。一応閉店間際の喫茶店を覗いてみたものの、外から見える範囲には夫がいない。
このような場合、浮気相手の女のマンション方向へ転進調査すべきであるが、そこでも夫やその車を発見出来なかった場合、契約上の張込み開始時刻である２１時にこちらの喫茶店に再び戻って来られるか微妙な時間である。よって、直ぐに依頼者である妻に電話をしたところ、運よく直ぐに連絡がとれたので、この状況を説明して許可を得たうえ、ひとまず女のマンション付近の調査を実施することとなった。

車両発見

私たちは車で女のマンションへ向かった。前回の調査時、夫は自身のＳＵＶを路上駐車していたが、いつも同じとは限らないし、そもそも女のところに居るとも限らないので、走行中も行き交う車両に注意していた。
マンションに到着、前回夫が路上駐車していた場所に車は無い。一応マンションの裏に回り、３階のベランダ側を視察したものの、そう都合よく夫の姿を確認できるわけもなく、何ら参考になることもない。
仕方ないので、もう一度喫茶店に戻ろうと更に脇道を入ったところ、その道沿いのコインパーキングに夫のＳＵＶが停まっている。ナンバーも間違いない。

一体何時からここに停まっていたのか気になるところ。コインパーキングに対象車両が停まっている場合、これを調べるのは簡単である。対象車両の駐車料金精算の操作をすれば駐車開始時刻と料金が表示される（当然、実際には支払はしない。）。
直ぐにでも確認したいが、我々は、たった今この車を発見したばかりである。一見したところ車の中に人の様子はないが、夫や女が付近にいたり、今こちらに向かってきている可能性もある。それに、このコインパーキングには対象車両しか停まっていない。我々が精算機の操作中に夫が戻ってきてしまったら話にならない。焦りは禁物である。
本当に慎重にする場合には、我々の調査車両も一度このコインパーキングに駐車して駐車枠番号を間違えたふりをして操作すれば万全なのであるが、そこまでする必要もないであろう。

一旦、前回同様に、もう１名の調査員には車に乗ったままＳＵＶに対する張込み、私はマンションの正面玄関を見ることができる位置で立張りをすることにした。
前回は路上駐車であったのに、今日はコインパーキング。泊まるのか。だとしたら、一晩中張込みとういうことになるし、なかなか辛い。

夫が出てきた。が、直ぐに・・・

２１時４０分、夫がマンションの正面玄関を一人で出てきて、コインパーキング方向へ向かって歩き出した。わざわざコインパーキングに停めたのに、こんな時間に出てきたということは、相当早くから女の所に来ていたのか。
ＳＵＶを監視しているもう１名の調査員に直ちに連絡をし、私は夫の尾行を開始した。
夫はＳＵＶに戻りドアを開けたが、乗り込まずにガサガサと動き、もの５秒で何の迷いもなくドアを閉め再びマンション方向へ歩き出した。忘れ物か何かを取りに来ただけの様である。

今度はもう１名の調査員に夫の徒歩尾行を任せ、この隙に私は駐車料金の精算機を操作して駐車開始時刻を調べようとした。私は、素早く対象車両のＳＵＶの駐車枠番号を押して「精算」のボタンを押した。が、駐車時間や金額も表示されない。あれっと思い、駐車枠番号を再確認し、もう一度精算操作したが同じである。故障か。今一度ＳＵＶの下を覗き込んだところ、フラップ板が上がっていない。このＳＵＶ、某外車であり車底部が極めて高いので機械が車両を検知していようである。これでは、いつからここに停まっているのか知ることはできない。
予想されるのは、わざわざコインパーキングに停めたのだからお泊りコースなのであろう。

調査を始めて短期間に２回とも夫がこのマンションに出入していることは明らかになっている。後は、女と居るところなり、せめて部屋番号だけは特定したい。

深夜１時を過ぎたが、夫はマンションから出てこない。当然、ＳＵＶも動かない。
依頼者である妻に連絡をしてこの状況を説明したところ、この時間まで帰ってこないということは、これまでの経験則上朝帰りのパターンに間違いないとのことである。このまま一晩中張込んでいても、恐らく無駄になるであろうということで、調査費用のことも考慮し、張込みを一時中断し、朝６時から再度実施することとした。

張込み再開

朝６時、張込み再開である。私は再びマンションの正面玄関を張込んでいる。早く出てきて欲しい。
８時４８分、夫が一人でマンションから出てきた。そのまま裏のコインパーキングへ向かって歩き出す。これまでずっと夜間にしか夫を見ることはなかったので、明るい時間ではっきりした写真や動画を撮れるのは初めてである。私はもう一名の調査員に連絡をし、夫の顔をしっかり撮影するよう指示した。
コインパーキングに到着した。フラップ板が下がったままであり精算できないはずなので、夫がどのような反応をするのか気になっていたが、この夫、そもそも精算機に向かうことすらなく全く躊躇なく運転席に乗り込み、そのまま走り出してしまった。この車でこのコインパーキングに停めれば、機械が検知せずにタダで利用できることを知っているようである。
この行動を見る限り、浮気の常習であることに加えて、不正駐車の常習でもあるようだ。まあ、私は民間のただの探偵であるので、わざわざ通報まではしないが、夜間帯は一晩停めても３００円、その位払えよと思う。いや、検知しないから払いたくても払えないのか。そんなことを考えながら、少し時間を置いてからこちらは慌てて調査用車両の駐車料金を精算し、夫の乗るＳＵＶを尾行した。
この日夫は、妻の居る自宅へは戻らずに、喫茶店近くの月極駐車場に車を停め、そのまま仕事を始めた。

今日も女との接触状況や部屋番号の特定には至らなかった。女が出てこない以上、調べようがないのだが、早く浮気の証拠を掴みたいところである。次回にかけよう。